打撲とは
衝突や転倒などによる強い衝撃で、筋線維や血管が損傷する状態を打撲と呼びます。サッカーやラグビー、格闘技などのコンタクトスポーツではよくみられます。
軽度の場合は圧迫した際に痛みを感じる程度ですが、中程度以上では腫れや熱感を伴うことがあります。
皮膚や皮下組織の血管や筋肉が損傷し内出血を起こすと、ぶつかった部分やその周囲が青紫色に変化します。また、筋肉の収縮が妨げられ、動きの制限が生じることもあります。
部位別の症状と対処法
手足をぶつけた場合
打撲による症状としては、腫れや痛み、皮下出血などがみられます。無理に動かさず、患部を安静に保つことが重要です。氷のうや濡れたタオルなどで患部を冷やすと、腫れや痛みが和らぐことがあります。(最近は筋肉成分の冷却は推奨しないといわれています。)
もし長時間激しい痛みが続いたり、徐々に腫れや痛みがひどくなる場合は、骨折などの可能性があるため、医師の診察が必要です。早めの診察を受けることで、適切な対処法が見つかる場合があります。
頭をぶつけた場合
頭痛や吐き気、めまい、ふらつき、意識障害、頭蓋内出血、脳震盪などの症状が現れる可能性があります。意識があり、意識障害などの異常がない場合は、頭をやや高い位置にして横たわり、安静を保つようにします。もし頭部にこぶや傷があれば、様子をみながら冷やします。早めの脳神経外科も推奨されます。
頭部の打撲は致命的な場合があるため、頭蓋内の損傷が疑われる場合は、無理に動かすことは避け、速やかに救急車を呼んで救急隊員や医師の判断を仰ぎましょう。
首や背中をぶつけた場合
打撲による際立った痛みや手足のしびれ、息苦しさ、吐き気などの症状が起こることがあります。首や背中には重要な神経が通っており、打撲でこれらが損傷すると、呼吸障害や手足の麻痺などの後遺症が残る可能性があります。まずは呼吸や手足の動きに異常がないかを確認します。
打撲後、周囲の皮膚の色が変わったり、痛みが増す場合は、骨折の可能性があります。その際には固くて平らな場所に仰向けで横たわり、安静に保ちながら、必要ならば医師の診察を受けることが大切です。
胸をぶつけた場合
痛み、呼吸困難、吐き気などが現れることがあります。胸部に打撲を受けた場合、襟やベルトなどを緩めて、楽な姿勢を保ちつつ、安静にして経過をみましょう。必要に応じて、患部を冷やすことも考えます。
肋骨や胸骨が骨折していると、咳やくしゃみ、寝返りなどの体動で痛みが出たり、呼吸が困難になったり、血痰が出たり、心拍が乱れたりすることがあります。これらの症状が出た場合は、速やかに医師の診察を受けるようにしてください。
打撲したらどうしたらいい?
患部に氷水などで冷やして痛みや発赤を軽減し、患部を安静に保つことが重要です。(最近は筋肉成分の冷却は推奨しないといわれています。)特に激しい痛みや変形、大きな傷がある場合には、骨折や脱臼の可能性が考えられますので、患部を固定して病院を受診することが必要です。
打撲した場合の対処法
打撲の際は、基本的にRICE処置が有効とされてきました。RICEとは「Rest(安静)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)」の頭文字に基づく基本的な応急処置です。しかし最近の知見では、ただ安静というのは間違っていて、またこのRICEという表現だけでは不十分だということになり、このRICE処置自体の意義が見直されています。
RICE処置にかわるPOLICE処置が注目されておりこれについて説明していきたいと思います。
POLICE処置とは
「Protection(保護)・Optimal Loading(最適な負荷)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)」
保護(Protection)
装具やシーネなどで損傷部位を保護し、再受傷や悪化を防ぐようにします。
最適な負荷(Optimal Loading)
早期から最適な負荷をかけることで、最適な組織修復を促すことができます。(診察でチェックをしながら最適な負荷についてはご説明致します。)
冷却(Ice)
患部を冷やすことにより痛みを和らげる効果があります。
圧迫(COMPRESSION)
患部を圧迫することにより、腫れや内出血を抑える効果があります。
拳上(ELEVATION)
患部を心臓より高い位置に挙げることにより、血液の循環を抑え、内出血を抑える効果があります。
テーピング
テーピングは捻挫や突き指などのケガで使われることが一般的ですが、打撲時にも有効な方法です。患部にテープを巻くことで、打撲による痛みを和らげる効果が期待できます。
テーピングには主に3つの利点があります。
- 患部を圧迫して痛みや腫れを抑える
-
関節を固定して運動時のサポートや制限をする
- 綿を巻くことで同じ箇所への再度の打撲を防ぐ
ただし、テーピングは一時的な処置であり、試合後は直ちに安静にして医師の診察を受けることが重要です。放置すると痛みや腫れが悪化し、後遺症を残す可能性があります。
お子様が打撲した場合の
注意点
もしお子様が高い場所から転落して頭や背中を強く打った場合は注意が必要です。初めは問題がないようにみえても、後から症状が現れることがあります。最初は安静にして泣き止んだりある程度落ち着いたところで医療機関の受診をお願い致します。
もしお子様が自力で起き上がれないようであれば、意識を確認した上で速やかに救急車を呼びましょう。安易に動かすことが危険な場合もございます。
打撲に対する治療
診察と検査
当院では診察を行い、必要に応じレントゲンやエコーなどの検査を行います。
超音波治療、ハイボルテージ電気刺激治療
損傷した組織が深部に及んでいる場合や、誘発物質が発生している箇所に対して、超音波治療や高電圧の電気刺激を与えて組織の修復を促進します。
受傷後早い段階からこれを始めることで痛みや腫れが早く改善し、早くスポーツ復帰できることが証明されています。
固定
安静時や動作時の痛みの程度や腫れの状況などを総合的にみて、シーネやギプス固定、テーピングや包帯などの固定を行います。
テーピングの種類は、腫れを和らげたり、筋肉を強化したり、関節を固定するなどの目的に応じて選択されます。患者様一人ひとりのケガの状態に応じて、テーピングを施す方法をカスタマイズしていきます。
打撲は何日ぐらいで治りますか?
打撲は、皮膚に傷がない状態で皮下組織(筋肉や血管)が損傷したものです。早急な診察を受けた場合、軽度な打撲では通常、痛みや腫れは1週間から2週間ほどで治まります。重度の打撲でも、4週間から6週間、約1カ月程度で治癒することが一般的です。
注意すべき打撲
頭部や腹部を打撲した場合、脳や内臓に損傷が生じる可能性があります。
特に、意識障害がみられたり、激しい痛みが持続する場合には、できるだけ早く受診してください。
打撲と骨折の見分け方
打撲の際には強い痛みを感じますが、骨折かどうか判断する際にはいくつかの特徴があります。骨折した場合、いためた瞬間に何かが折れた感触や音を感じることがあります。外見的にも変形が見られることがあり、特に関節以外の部分であれば目立ちます。また、骨折では患部を動かすことで激しい痛みが生じます。さらに、腫れや内出血が広がる傾向があります。
打撲の場合は押すと痛むのに対し、骨折した場合は軽く触るだけでも痛みが生じますが、これらの症状が骨折でなくても現れることもありますので、患部に疑念がある場合は早めに医師に相談することが大切です。
打撲の症状を部位別に解説
手の甲や指
手を打撲すると、内出血によって皮膚が紫色に変色することがありますが、一般的には指が動かせる程度であることがほとんどです。ただし、指が通常と違う方向に曲がっていたり、曲げ伸ばしの際に異常な痛みを感じたり、問題がない部位と比べて腫れている場合は、骨折の可能性があります。
足の甲や指
足の甲や指を打った際、しばらくは歩けないほどの痛みを感じることがあります。また触れるだけで激痛が走ったり、広範囲に腫れや内出血が見られる場合は、骨折を疑うべきです。
膝
膝を打撲した場合、内出血や腫れ、痛みは見られるものの、通常は動かせることがほとんどです。最初はあまり痛みを感じないこともありますが、時間が経つと痛みが現れることもあります。
しかし、膝蓋骨(いわゆる膝の「お皿」の骨)や膝周りの骨(大腿骨や脛骨)を骨折すると、激しい腫れや痛みで患部が動かせなくなることが一般的です。通常、歩行が困難になりますが、状況によっては骨折があっても歩行可能な場合もあります。気になる症状がある場合は、無理をせずご相談ください。
すね
すねを打撲すると、打った場所が盛り上がり、内出血が見られることがあります。その部位にはズキズキとした痛みが生じ、時には患部が熱を持つこともあります。すねは筋肉に覆われていないため、骨折のリスクが高い部位の一つです。
歩行時や荷重をかけた際に強い痛みが出る場合、骨折の可能性があるかもしれません。
太もも
太ももを打撲すると、内出血が起こり、膝を曲げることが一時的に難しくなることがあります。打撲後に荷重歩行で痛みがあり歩行が困難になることがあります。このようなときは筋損傷であることが多いです。骨折であれば歩行は出来ないことが多いと言われています。
胸
胸部を打撲した場合、通常は大きく息を吸ったり吐いたりすることができますが、実際に骨折しているとそのような動作で強い痛みを伴います。さらに、肋骨を骨折した場合は、咳や深呼吸、体動で痛みが強くなり明らかな変化が現れることがあります。
胸部は心臓など重要な臓器がある場所であり、打撲と思われる場合でも、念のためご相談ください。
腰
腰を打撲した場合、通常は腫れや痛み、内出血が現れますが、大抵は1~2週間で症状が和らいできます。
一部の強い痛みや症状がなかなか引かない場合、骨折の可能性を心配することもあるでしょう。しかし、ほとんどの場合、腰の打撲や強い衝撃によるものであり、骨折に至ることは珍しいです。
腰の骨折は、極めて硬い物体(例えばコンクリートの角)に強くぶつかったり、激しい転倒などが原因となることが多いです。骨折している場合、寝返りを打つことや起き上がることすら困難になるほどの強い痛みを感じることが一般的です。
おしり
お尻を打撲することはよくあります。その際、筋肉だけでなく尾骨(尾てい骨)周辺にも痛みが生じることがあり、一般的には2-3週間ほどで回復することが期待されます。
ただし、尾てい骨周辺の打撲と骨折は痛みが似ているため慎重さが求められます。痛みや腫れがしばらく引かない場合は、速やかにご相談ください。
お尻の骨折が起こると、気分が悪くなったり嘔吐したりすることもあります。