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痛風

痛風のセルフチェック

下記の症状に当てはまる症状がある場合、痛風の兆候かもしれません。
急な足の痛み(特に親指の付け根)、腫れなどが気になるときは、早めに受診されることをお勧めします。

  • 人間ドック・健康診断などの血液検査で「尿酸値が高い」と指摘された
  • 暴飲暴食をした後、急に「足の親指のつけ根」が赤く腫れて痛くなった
  • 足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節が赤く腫れて痛い
  • 肘・手の甲・耳の縁が腫れて、中に白っぽい塊がある
  • 夜になると関節が痛くなる

痛風とは?

以前は「痛風は贅沢な病気」と揶揄されることもありましたが、最近では食生活の欧米化と共に患者数が急増し、今では「生活習慣病」の一つとみなされています。厚生労働省の調査によると、2019年には約125万人の患者が報告され、痛風の前段階である「高尿酸血症」の推定患者数は1,100万人を超えています。なお、女性ホルモン(エストロゲン)は尿酸の排泄を促すため、約95%の患者が男性です。発症ピークは60代ですが、初めて痛風発作が現れるのは30代や40代という若い世代の場合もあります。30代から40代の男性の約3割に高尿酸血症がみられるという調査結果も報告されています。

痛風の原因

痛風の原因は「尿酸塩が関節内で結晶化・沈着すること」です。この尿酸塩の結晶化は、血中の尿酸値が高い状態が続くことによって起こります。血清尿酸値が7.0mg/dL以上である「高尿酸血症」とされています。高尿酸血症の人は、痛風を発症する傾向がありますが、必ずしも痛風を発症するとは限りません。

痛風発症の危険因子

尿酸値が高い状態に加えて、以下のような危険因子が組み合わさることで痛風が発症しやすくなると考えられています。

  • 体質(遺伝素因)
  • 高血圧
  • 肥満
  • 過剰なアルコール摂取の習慣がある
  • 食事の時間が不規則
  • ジュース・清涼飲料水をよく飲む
  • 甘いもの好き
  • ストレスが多い
  • 30代以上
  • 男性
  • 家族や親族に痛風の方がいる
  • 降圧利尿剤を服用している

尿酸とプリン体の関係

尿酸とは身体でプリン体が分解されてできる老廃物の一種です。プリン体は身体を動かすためのエネルギー源として常に生成されており、肝臓で尿酸に変換されて血中に存在しています。通常、1日に体内で作られる尿酸の量は約700mgで、不必要な部分は腎臓を通じて尿や便として排出されます。ただし、体内の尿酸量が多くなると排泄しきれず、体内に滞留することがあります。
プリン体は主に肉、魚、穀物、野菜に含まれる「旨味のもと」として知られています。レバーや煮干し、干ししいたけなど、健康的に見える食品には、ビールに比べてはるかに高いプリン体が含まれています。
ビール以外のアルコールを摂取しても尿酸値が上がらないという考え方があるかもしれませんが、アルコール自体が尿酸値を増加させる作用があるため、ビール以外のアルコールを摂取しても、適量を守ることが重要です。

痛風の症状

多くの方は痛風の症状として、「急性の関節炎による足の付け根の激痛」を想像されることが一般的です。しかし、痛風による関節炎には「急性」だけでなく「慢性」なものもあり、それぞれに異なる症状が現れます。

痛風の関節炎の分類と症状

痛風による関節炎は、多くが「足の親指の付け根」で起こりますが、足首や足の甲、かかとなどでも発生します。また、稀に手や耳(上半分)にも痛風が発生することがあります。

急性関節炎

急激な痛みが一つの関節で生じる「痛風発作」や、その関節が赤く腫れて熱を帯びることがあります。この症状は突然現れ、痛みのピークは半日から1日程度で、その後1~2週間で痛みが和らぎます。痛風発作の前触れとして、関節に違和感や痛みを感じることもあります。

慢性関節炎

高尿酸血症が継続し、尿酸値をコントロールしないまま痛風の再発が起こると、次第に「慢性関節炎」に移行することがあります。次の痛風発作までの間に、発作と比べて比較的痛みの少ない状態が続きます。また、手足の指先、肘、膝、アキレス腱、耳などに尿酸塩の結晶が蓄積して腫れる「痛風結節」が現れたり、関節に変形が生じることがあります。

痛風発作が激痛となる理由

体内の尿酸量が増えて高尿酸血症になると、血中に溶け切らない余分な尿酸が結晶化します(尿酸塩結晶・尿酸ナトリウム結晶)。この尿酸塩結晶は細長い針状の結晶で、関節に次第に沈着します。
運動などの理由で関節から尿酸塩結晶が放出されると、白血球がこれを異物と認識し激しく攻撃するため、炎症が生じ、激しい痛みが起こるのです。

痛風の検査・診断

当院では、痛風特有の臨床症状や画像検査、血中尿酸値の上昇などから総合的に判断します。診断の確定には関節内の尿酸塩結晶や痛風結節の存在を確認することもありますが、それ以外にも様々な検査を組み合わせ、痛風の状態や合併症の有無を評価します。

問診・視診・触診

症状や過去の病歴、飲酒・食事・運動などの日常習慣、家族に痛風の既往歴があるか、現在服用中の薬など、詳細な情報をお聞きします。

血液検査

血液検査で「尿酸値」を測定します。痛風(高尿酸血症)の方は、通常、高血圧や脂質異常症といった生活習慣病を併発することがありますので、肝機能やコレステロール、血糖値も同時に確認します。
ただし、痛風発作中やその直後では通常よりも尿酸値が低下することがありますので、「尿酸値が低い=痛風ではない」と結論づけることはできません。その場合は、症状が落ち着いた別の日に再度検査を行います。

尿検査

尿のpH値を調べます。体内の尿酸が増えると尿は酸性になります。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査で関節内の尿酸塩の状態や関節炎の程度を確認します。また、痛風の合併症である腎臓結石や尿管結石なども同時に確認します。

関節液検査

関節液検査では、関節内に溜まった関節液を採取し、顕微鏡で尿酸塩結晶の有無を確認します。この検査は確定診断に有効ですが、針を使用するために痛みを伴うことがあり、患者様にとって負担が大きいため、現在はあまり広く行われていません。

それ以外にも、尿酸クリアランス検査として、尿検査を行い血中尿酸値が高くなる原因(腎臓での尿酸排泄効率)を調べることや、腎機能を評価するクレアチニン測定を行う場合があります。

痛風の治療

痛風の治療では、まずは「関節炎の処置」と「尿酸値をコントロールする治療」が重要です。痛風発作を鎮めた後、尿酸値を下げる治療に移ります。
痛風・高尿酸血症の治療基準として「6-7-8ルール」というものがありある程度指標となりますが適宜患者様の状況によって治療は工夫が必要となります。

6-7-8ルール

  • 尿酸値7.0mg/dl以上で「高尿酸血症」と定義する
  • 尿酸値8.0mg/dl以上で、薬物治療の開始が望まれる
  • 治療中は尿酸値を6.0mg/dl以下にコントロールする

また、痛風関節炎を繰り返す、痛風結節などの合併症がある場合には薬物治療が必要です。

痛風による関節炎の治療

痛風発作時には、炎症を鎮める消炎鎮痛剤を主に用いて、痛みの軽減や関節炎の緩和に努めます。安静にして冷やすことで痛みを和らげることができます。また、痛風の発作前に関節に違和感がある場合には、白血球の働きを抑える薬を服用することがあります。ただし、この薬の服用によってダウン症や先天異常児の出生リスクが報告されているため、女性だけでなく、男性の服用にも慎重さが求められます。

尿酸値を下げる治療

生活習慣の改善

痛風は生活習慣病であり、通常、尿酸値が7.0mg/dL~8.0mg/dL未満の範囲では、食事療法や運動療法などの「生活習慣改善」が主要な治療法となります。多くの高尿酸血症患者が肥満傾向にあるため、体重管理は特に有効です。

食事療法

プリンが豊富に含まれる食品(内臓、肉、魚介類、干物など)や高カロリー食、清涼飲料水などの過剰摂取は控えるべきです。さらに、ビール以外のアルコールも過度に摂取しないように留意しましょう。

運動療法

食事や飲酒の制限と共に、週に3回程度の軽い運動(ウォーキング、ジョギングなど)が必要です。激しい運動は逆効果となることがあるため、避けましょう。運動中はこまめな水分補給が重要で、脱水症状には注意が必要です。

薬物治療

尿酸値が8.0mg/dL以上の場合、生活指導と薬物治療を併用して、約3~6か月かけて尿酸値を6.0mg/dL以下に抑えるよう治療を行います。尿酸値を下げる薬には、2つのタイプがあります。

尿酸排泄促進剤

尿酸の体外への排泄を促す薬です。

尿酸生成抑制剤

尿酸の生成自体を抑える薬です。

尿酸値の急激な変動が痛風発作を引き起こす可能性が高いため、尿酸値をコントロールする治療を開始してから約6か月間は、急激な尿酸値低下による痛風発作のリスクがあります。そのため、医師の指示に従って処方された薬を定期的に服用することが重要です。
自己判断による薬の服用中止は危険ですので、何か気になる点があれば、医師にご相談ください。

よくあるご質問

痛風(高尿酸血症)を放置するとどうなりますか?

以下のような合併症には十分な注意が必要です。

  • 痛風結節
  • 尿路結石
  • 慢性腎臓病
  • 心血管障害(狭心症・心筋梗塞など)
  • 脳血管障害(脳出血・脳梗塞など)

高尿酸血症状態が持続すると、尿酸結石が腎臓で形成され、これが腎臓機能の悪化や腎不全を引き起こし、最悪の場合、尿毒症などの重篤な合併症を招くこともあります。そのため、尿酸値が上昇した場合は早めの対処が必要です。

痛風は再発しますか?

痛風は再発が頻繁な疾患です。治療を怠ると、多くの場合、半年から1年以内に再発する可能性が高いです。再発が繰り返されると、足首、膝、手の関節などに痛みや炎症が現れ、慢性的な関節炎や痛風結節、尿路結石などの合併症が起こることがあります。痛風発作の痛みは通常1週間程度で治まりますが、その後も尿酸値をコントロールするために、薬物治療や生活習慣の改善を継続することが重要です。

痛風(高尿酸血症)では、日常生活でどんなことに注意すると良いですか?

痛風が発症する背景には、通常「高尿酸血症」という基礎疾患が存在しています。そのため、痛風の発症や再発を防ぐためには、まず尿酸値の高い状態を改善することが重要です。痛風は生活習慣病の一つであり、生活習慣の見直しをまず始めます。

食事療法

主に菜食中心の食生活に切り替え、腹八分目を心がけて体重を適切に保ち、プリンを多く含む食品や果糖、過剰なアルコール摂取を控える(例えば、日本酒は1合、ビールは500ml、ウイスキーは60ml程度が目安)、日々十分な水分を摂ることが大切です(甘い飲み物やアルコール以外で1日に2リットルを目指しましょう)。

運動療法

適度なストレス発散として、週に3回程度、ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの軽い有酸素運動を取り入れることが良いです。

薬物療法を受けている場合、痛風発作が起こらないからといって、自ら服薬を中断せず、定められた薬をきちんと服用することが重要です。