腰の痛みとは
腰椎の構造
腰は身体を支える要として常に多くの負荷がかかっているため、痛みが生じやすい箇所です。重いものを持った際や腰をひねった際に、激しい痛みが走る、病院へ行くほどではないが、腰に漠然とした重苦しい痛みを感じる、腰痛以外にもお尻や足にしびれるようなビリビリとした感覚が現れているなどの症状でお悩みの方はご相談ください。
代表的な病気
急性腰痛症
急性腰痛症は、急に腰が痛くなる状態で、重いものを持ち上げた時や腰を曲げた際などに発生し、一般的にぎっくり腰とも呼ばれます。通常、腰回りに強い痛みが現れ、その後徐々に痛みが緩和していく傾向がありますが、一部のケースでは痛みが強まることもあります。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎は背骨の腰部分を形成する5つの骨で、それぞれの骨の間には椎間板と呼ばれる軟骨があります。この椎間板が何らかの原因で正常な位置から突出したりしてずれることで、脊髄や神経根を圧迫する状態が腰椎椎間板ヘルニアです。この状態になると、通常の腰痛だけでなく、お尻から足にかけて痛みやしびれが生じることが多いです。稀に、尿の排泄が困難になる排尿障害や、便の排出に問題が生じる排便障害、また下垂足といって足首が動かず上がらないといったことが起こることもあります。
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は、背骨の中にある脊髄が通る空間が狭くなる病気です。
間欠性跛行
この状態では、腰痛や足の痛み・しびれなどが症状として現れますが、足の痛みやしびれは安静時にはあまり感じず、立ったり歩いたりすると痛みが出やすく、座って休んだりすると症状が軽減する傾向があります。(間欠性跛行:かんけついせいはこう、と言います。)
腰椎すべり症
腰椎すべり症は、通常は腰椎が通常の位置からずれて後方の脊髄や神経根を圧迫する状態を指します。この状態になると、一般的には腰痛や足の痛み・しびれ(特に立ったり歩いたりした時)などの症状がみられます。ただし、腰痛のみの場合や自覚症状がまったく現れない場合も稀にみられます。
腰部変形性脊椎症
腰部変形性脊椎症は、通常は椎間板や腰椎自体が加齢によって変形する状態を指します。初期の段階では変形だけが進行し、症状がないことが一般的です。しかしその後、変形が進行すると神経が圧迫されることがあり、その結果、腰痛や背中の痛み、足の痛み・しびれが生じることもあります。
腰椎分離症(疲労骨折)
中学生から高校生の腰痛でかくれた疲労骨折がしばしば見られます。これが腰椎分離症です。腰痛はあるものの最初は我慢してプレーは出来ていましたが、だんだん痛みが強くてプレーに大きな支障が出たと来院されることが多いです。腰だけの問題ではなくて、股関節や下半身のかたさなどが原因になることもありますのでしっかり診断して装具治療やリハビリ、コンディショニングを行います。復帰に4-6か月時間がかかることもありますが、うまく治療が早く行われ、しっかり効果が出てくれば2か月半から3か月かからずに復帰している子供たちもおられます。
腰痛が症状の一つとして
現れる病気
泌尿器の病気
泌尿器の病気には、腎臓や尿管、膀胱、尿道に石ができる尿路結石、膀胱に細菌が感染して炎症が起こる膀胱炎、腎臓の中で尿が溜まる部分で細菌が感染して炎症が起こる腎盂腎炎などがあります。
これらの病気の症状として、腰痛以外にも尿路結石では激しい排尿痛や血尿、吐き気があります。膀胱炎では排尿痛や血尿、頻尿がみられ、腎盂腎炎では発熱や寒気が起こることもあります。
強い痛みや発熱が現れる場合は、早めに診察を受けることが重要です。早期の治療が必要な場合がありますので、早めの受診を検討しましょう。
消化器の病気
消化器に関連する病気には、胃や十二指腸の粘膜が損傷する胃・十二指腸潰瘍、胆管に結石ができる胆石、胆嚢が炎症を起こす胆嚢炎、膵臓が炎症を起こす膵炎などがあります。
これらの病気は程度は異なりますが、一般的にはみぞおちなどの上腹部の痛みや吐き気、嘔吐などの症状が主な特徴です。また、病気のある場所と痛みの発生場所が一致しないことが多く、腰部に痛みを感じることもあります。
婦人科の病気
女性における激しい腰痛の原因として、卵巣嚢腫や卵巣捻転、子宮外妊娠などの婦人科疾患が考えられます。
卵巣嚢腫は自覚症状がほとんどないことが一般的ですが、時に卵巣捻転を引き起こすことがあります。卵巣捻転では激しい下腹部の痛みや腰痛が現れ、痛みに伴う吐き気や嘔吐が起こることもあります。
子宮外妊娠では初期には無症状または下腹部の痛みが出ることがありますが、胎児(胚)が成長するにつれて周囲の組織を破ることで出血を引き起こすことがあります。
これらの婦人科疾患は緊急を要する場合が多く、命に関わることもあります。そのため、女性で激しい腰痛がある場合は早急に救急医療機関を受診することが重要です。
血管の病気
血管に関わる疾患である腹部大動脈瘤や腹部大動脈解離では、腰痛が症状の一部として現れることがあります。
腹部大動脈瘤は、お腹を流れる大きな動脈にこぶができる病気で、通常自覚症状はほとんどありません。しかし、瘤が破裂すると急激な腹痛や腰痛が生じ、大量の出血を伴うことがあります。
腹部大動脈解離では、胸や背中、腰などを中心に激しい痛みが起きることが一般的です。
これらの血管に関する病気は放置すると命に関わることが少なくありません。そのため、男女を問わず、激しい腰痛がある場合は速やかに救急医療機関を受診することが大切です。
皮膚の病気
皮膚疾患と腰痛は関連性が薄いように思えますが、帯状疱疹というウイルス感染による病気では腰痛が生じることがあります。
初期段階では、ピリピリとした刺すような痛みが皮膚で感じられ、その後、赤い斑点や水疱などの皮膚症状が現れます。
受診の目安とポイント
激しい腰痛がある場合は、速やかな治療が必要な病気が関連していることが多く、早急な受診が重要です。また、軽度の腰痛でも持続する場合や他の症状が現れる場合は、受診することが検討されます。
病気によって適切な受診科目は異なりますが、ご自身で原因を特定するのは難しいことが多いです。腰痛が主な症状であれば、まずは整形外科を受診することが良いでしょう。発熱や腹痛など他の重篤な症状が伴う場合には内科などへの受診が適切です。
受診時には、腰痛以外にどのような症状があるか、症状が始まった時期など、医師に詳細を伝えることが重要です。
日常生活上の原因と対処法
加齢
骨が弱くなり、筋肉量が減少すると、年齢を重ねるごとに腰にかかる負担が増大します。その結果慢性的な腰痛を引き起こしやすくなります。
加齢による腰痛を予防するには
まず、腰やお腹の筋肉量を増やし、背骨をしっかり支えることが重要です。これらの運動は腰痛が無い時に安全かつ自分のコンディションに合った程度で行うことが大切です。治療中の場合は、医師の指導を受けることも重要です。
また、丈夫な骨を作るためには、カルシウム、ビタミンD、たんぱく質などの栄養素を積極的に摂取することが必要です。良い姿勢を保つこと、前かがみになる際には慎重に行動すること、そして重いものを持つ際には注意深く行動することも、腰痛予防において重要な要素です。
運動不足
運動不足によって、腰を中心に体幹、下半身などの筋力が減少し、それにより腰椎に負担がかかります。加えて、運動不足から肥満になることが多く、その結果、腰にかかる負荷が増え、腰痛が発生しやすくなります。
運動不足を感じたら
運動は筋力の増加や肥満の解消、血流改善に役立ちます。運動不足を感じた場合は、ウォーキングやストレッチ、ヨガ、ピラティス、筋力トレーニングなど、できる範囲で取り組むことが重要です。ただし、腰痛がある場合、運動することで悪化する可能性があります。そのため、痛みがない時に無理のない程度で行うようにしましょう。
姿勢が悪い
背骨は体重を均等に分散するために、緩やかなカーブを描いています。しかし、猫背や反り腰などの悪い姿勢により骨盤の傾きや位置異常が起こったり、重力の影響を強く受けたりすることで腰に大きな負担がかかります。この負荷により、腰の筋肉が緊張しやすくなり腰痛が発生しやすくなります。
姿勢の悪さを感じたら
悪い姿勢が習慣化することがあるので、日々正しい姿勢を心がけることが大切です。また、悪い姿勢を自覚した時には、意識的に胸を張り、腰を伸ばす、また下半身のストレッチなどを積極的に行って正しい姿勢を保つように努めましょう。
長時間同じ姿勢が続く
同じ姿勢を長時間続けると腰の筋肉が緊張し、血液の流れが悪くなります。この結果、腰に余分な負担がかかり、疲れが溜まることで腰痛が引き起こされる可能性があります。
同じ姿勢が続いた時は
デスクワークや運転など、同じ姿勢を続ける作業を行う際には、作業の合間に腰を左右に揺らしたり、伸ばしたりして筋肉を緩めるための軽いのびやストレッチを行いましょう。休憩時には立ち上がり、体全体を動かすことが有効です。
寝具が合っていない
柔らかすぎるもしくは硬すぎる布団やベッドを使用すると、腰に過度な負担がかかり、それにより筋肉が緊張して腰痛が引き起こされる可能性があります。同様に、枕も高すぎる場合など、体に合わないと腰痛の原因になることが指摘されています。
体に合った寝具を選ぶためには
体に適した寝具を選ぶためには、まず体重や背骨の曲線などから、腰に負担をかけない固さや高さを知ることが重要です。多くの寝具メーカーでは、体にフィットする寝具を提供するために測定器を使用し、カスタマイズしてくれる場合もあります。