肩の痛みとは
肩の痛みは日常生活の様々な動作に影響を与えます。洗濯物を干したり、棚に手を伸ばしたり、つり革を掴んだりしたとき、服の脱ぎ着などで痛みが強くみられます。また就寝中に肩の痛みで目が覚め深い眠りにつけないため日中にも大きな支障を来たします。
肩の疾患はスポーツ時にも起こりやすく、具体的にどのような動きをすると痛むのか、痛みの程度・頻度などを細かく分類した上で、正確な診断と適切な治療が必要です。
肩のメカニズム
肩関節は上腕骨の先がボール状に丸くなっており(上腕骨骨頭)、そのボールを受けるようにお皿のような形をした骨(肩甲骨の関節窩)が擦れあうようにして動いています。この構造により、肩は広い可動域を持ち、腕を自由自在に動かすことができます。
腕を動かす際に腱板などのインナーマッスルが収縮することで上腕骨骨頭は関節窩に引き寄せられるように動き、肩関節のスムーズな動きを可能とします。
しかし、肩関節まわりの骨や筋肉にズレや変形などの問題が生じると、このスムーズな肩の動きがに支障が出て可動域(肩や腕を動かせる範囲)が制限されたり痛みが生じたりすることがあります。このような問題があると、可動域そのものにも大きな不具合が生じるため、日常生活での動作に支障をきたす可能性が高まります。
主な症状
通常、肩を使った動作の際に強い痛みを感じることがあります。安静時の痛みも自覚することもあります。この痛みが長く続くと、自然と肩の動かす範囲を制限するようになり、その結果、肩周囲の筋肉や関節が硬くなります。この状態が進行すると、肩の動きの制限が悪化し拘縮がみられ日常生活に大きな支障が出てきます。
肩に異常を生じる原因
外傷
肩の怪我や脱臼は、事故やスポーツなどが原因となることが一般的です。特に転倒した際に腕を強く突いてしまうことで肩に異常を感じる人が多く見られます。肩自体を打撲すると骨折や骨挫傷、腱板損傷、肩関節脱臼や肩鎖関節脱臼などを生じます。また肩自体を打撲していないのに、転倒いて手のひらをついた際に上腕骨が突き上げられるような形で肩の腱板損傷(断裂)を来たし肩の痛みが出ることもあり注意が必要です。
加齢による変性
老化が原因となって起こる異常で、関節周囲の組織に影響を与えます。骨の変形が強い場合が変形性肩関節症です。また筋肉と骨の結合部分である腱板に異常が現れることも多く、先に出た外傷による腱板損傷と違い、徐々に腱板が擦り切れて毛羽だったように痛んでくる損傷形態となります(腱板変性断裂)。
慢性的な炎症
最も数が多い疾患で肩関節周囲炎と言われます。俗に「四十肩」「五十肩」と呼ばれますが医学的にはこのような呼び方をすることはありません。突然の痛みが特徴でその原因ははっきりと特定されていないことが一般的ですが、来院して頂いた際に肩関節まわりの可動域制限やかたさ、関節の動きの特徴、体幹から下半身までの特徴をチェックし、まわりの異常から肩に負担がかかっていることが分かることが多々あります。そのためまわりも含めて調整をしていくことで治癒を早め再発を防いでいくことができます。一般的に治療には時間を要することが多いです。当院ではリハビリや投薬に加え、肩の動きがなかなか改善しない難治例には、エコー下にどこの動きが悪いのかチェックしハイドロリリースやヒアルロン酸注射などを行います。一般的には原因を突き詰めずに肩峰下滑液包という袋のある部分や肩甲上腕関節にとりあえず注射をされることが多いですが、昨今の知見によりエコーで動きが悪い部位を特定したり、炎症が残っている部位が可視化できるため、先ほどの肩峰下滑液包や肩甲上腕関節だけではなく、肩甲上神経や腋窩神経などの神経、癒着していて滑走が悪い筋膜などに的確にピンポイントでハイドロリリースが出来るようになりました。
代表的な疾患
脱臼
肩の脱臼は一般的に「肩が外れる」と表現されます。肩関節は、ボール状の上腕骨の頭と浅いお皿のような肩甲骨の関節窩からなり、この構造は可動域を大きくする一方で、緩みやすく外れやすい特性を持っています。強い力がかかったり、腕を突然強くついたりすることで脱臼が生じます。
脱臼時には周囲の筋肉や靭帯、関節包などが損傷しやすく、適切な治療を行わないと再発しやすくなります。脱臼が繰り返されると、肩関節の変形や機能の低下を引き起こす変形性肩関節症に進行する恐れがあります。脱臼後は速やかに正しい位置に骨を戻し、適切な安静期間を経て、リハビリによるインナーマッスル中心に筋力回復と求心位の改善(上腕骨と肩甲骨関節窩の良好な位置関係)が重要です。脱臼を繰り返す際などには手術になることもあります。
石灰沈着性腱板炎
肩関節内にリン酸カルシウム結晶と呼ばれる物質が急速に沈着することで引き起こされる疾患です。この症状は中年期以降の人々によく見られ、肩関節周囲炎と似たような症状が現れることが特徴ですが、かなり強い痛みでどうしようもないと、なんとかしてくれと表現される方が多いです。まずは安静を保ちつつ、症状を改善するために投薬やエコー下での注射や石灰破砕、吸引など様々な治療方法を行うことが必要です。
急性期
痛みが始まってからおよそ2-3週ほどは激しい炎症が伴います。そのため、安静時や夜間でも強い痛みが続き、肩を動かすことがしばらくの間、難しくなります。しかし、適切な治療を受けることで症状が自然に落ち着くことが多いです。
慢性期
急性期の激しい痛みが和らいだ後、肩を動かせなかったことで筋肉や靭帯の硬さが増します。その硬さが新たな痛みを引き起こし、腕の動きに制限をもたらします。
この状態が進行すると、関節周囲の組織が拘縮し、「凍結肩」として知られる状態に至ります。この段階では治療がより困難になるため、急性期から積極的な治療を行うことが重要です。
肩関節周囲炎
(四十肩/五十肩)
肩関節の痛みと動きの低下が特徴でその原因ははっきりと特定されていないことが一般的ですが、来院して頂いた際に肩関節まわりの可動域制限やかたさ、関節の動きの特徴、体幹から下半身までの特徴をチェックし、肩ではなくその他の部位の異常から肩に負担がかかっていることが分かることが多々あります。そのため肩以外の部位も含めて調整をしていくことで治癒を早め再発を防いでいくことができます。一般的に治療には時間を要することが多いです。当院ではリハビリや投薬に加え、肩の動きがなかなか改善しない難治例には、エコー下にどこの動きが悪いのかチェックしハイドロリリースやヒアルロン酸注射などを行います。一般的には原因を突き詰めずに肩峰下滑液包という袋のある部分や肩甲上腕関節にとりあえず注射をされることが多いですが、昨今の知見によりエコーで動きが悪い部位を特定したり、炎症が残っている部位が可視化できるため、先ほどの肩峰下滑液包や肩甲上腕関節だけではなく、肩甲上神経や腋窩神経などの神経、癒着していて滑走が悪い筋膜などに的確にピンポイントでハイドロリリースが出来るようになりました。
腱板損傷/腱板断裂
加齢や肩周囲筋の衰え、硬化が原因で、無理な負荷によって腱板が摩耗して痛んでしまう損傷形態が腱板変性断裂です。特に腱板は骨と筋肉をつなぐ場所であり、摩耗が起こりやすい部位です。またスポーツや外傷などの動作が引き金となる場合は、急激な痛みから肩の動きが制限される特徴がありこちらも腱板断裂、腱板損傷と呼ばれますが先ほどの腱板変性断裂とは分けて考えていく必要性があります。
軽度な場合はリハビリや痛みの管理を行うことで、比較的、元の機能に近づけることができますが、損傷部位の面積が大きい場合や疼痛や可動域制限・筋力低下が改善しない場合には手術が必要なこともあります。
肩こり
肩こりの症状は、日々頭部の重さを支える首の筋肉や肩関節周りの多くの筋肉の疲れや炎症などが複合的に起因します。軽い症状からもうどうしようもないくらい強い肩こりを自覚され来院される方がいたり、非常に幅広い症状があります。まれに肩こりが心筋梗塞などの初期症状として出ることがあり注意が必要です。
野球肩
投球を行う際に肩に生じる痛みは、幼少期から成人まで幅広い年齢層で多く見られる疾患です。その痛みが発生する部位や年齢による影響を考慮しつつ、治療方針を細かく検討する必要があります。症状は投球時に肩に痛みが生じますが、投球のどのタイミングなのか、肩のどの部位が痛いのかといったことは人によってまったく違います。また痛みの原因は肩だけの問題ではないことが多く、下半身がかたいとか、体幹がうまく使えていないとか、他の原因によるものであることがよくあるのでしっかり全身的なコンディショニングが必要になります。この下半身から動作が始まり、体幹、肩、上肢とつながっていく一連の動きの流れを運動連鎖といいます。
スポーツで起こりやすいインピンジメント症候群
インピンジメントは「衝突」という意味を持ちます。肩を激しく動かす運動を繰り返すと、関節内で骨同士や骨と軟骨・靭帯がぶつかったり、筋肉が骨の間に挟まれたりする可能性が高まります。これによって組織に損傷が生じ、強い痛みが生じることがあります。特に野球などのスポーツでこの症状が見られることが多いですが、バレーボールやテニス、バドミントンなど、腕を前に大きく振る動作をするスポーツでも注意が必要です。
成長期のお子様では、骨の成長が未熟なため、この状態が軟組織に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。そのため、早期に正確な診断と適切な治療を受けることが極めて重要です。
診断
レントゲン
構造的な問題や骨の変形の有無を見極めることから始めて、動作時の骨同士の衝突や不必要な負担が生じないような構造になっているかなど、細かな点まで詳細に確認します。
超音波検査
腱板やそのほかの筋肉の動きをリアルタイムでチェックし、またその損傷部位と程度を見極めるために有効です。炎症の程度や関節内の水腫、そのほか腫瘍などレントゲンでは観察することが出来ない部位を観察することができます。
MRI
肩関節周囲の炎症やの腱板、筋肉などの軟部組織の状態を精密に確認します。肩関節を安定化させる関節唇という軟骨や靭帯、関節包なども評価することができます。
必要な場合は連携する高度医療機関にご紹介します。
治療
薬物治療
痛みを和らげるために痛み止めの服用や貼り薬、時には関節内や肩峰下滑液包などにヒアルロン酸やステロイド剤を注入することもあります。肩峰下滑液包や肩甲上腕関節だけではなく、肩甲上神経や腋窩神経などの神経、癒着していて滑走が悪い筋膜などに的確にピンポイントでハイドロリリースが出来ます。石灰沈着性腱板炎に対する治療の一環として、炎症を抑えるために針を使って液体を除去する治療も行われることがあります。
安静
強い症状が現れている場合は、一定期間、肩に無理な負担をかけずに安静にすることが基本です。激しい痛みで腕の動きが制限されている場合には、三角巾で腕を吊るように固定し、肩を安定させることも行われます。特にスポーツによる痛みの場合は、完全な機能回復が見られるまでの休養、調整期間が重要です。ただし当院ではいつまでも長く休んで頂くということはしません。肩を休める必要がある時期でも、それ以外の患部外はしっかり調整、強化をすることを徹底致します。また肩自体も最短期間で運動再開が出来るよう評価を継続していきます。
物理療法
肩周辺の血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、そして炎症を改善するために物理療法を用います。これによって肩関節の奥深い部分の代謝を活発化させます。大谷翔平選手がロサンゼルスで現在も使用している干渉電流型低周波治療器を用いて調整をすることも可能です。ぜひ医師や理学療法士にご相談下さい。
運動器リハビリテーション
理学療法士の専門指導のもと、適切な肩の運動を確認し、ストレッチや筋力トレーニングを行い、硬直した筋肉の緊張を和らげ、柔軟性を高めます。また、肩の正しい動きや位置を確認し、再発を防ぐための肩の負担を軽減する方法を丁寧に指導いたします。
肩関節まわりの可動域制限やかたさ、関節の動きの特徴、体幹から下半身までの特徴をチェックし、肩ではなくその他の部位の異常から肩に負担がかかっていることが分かることが多々あります。そのため肩以外の部位も含めて調整をしていくことで治癒を早め再発を防いでいくことができます。
その痛みは本当に「肩」からの痛み?
私たちが「肩」と指し示す場所と、医学的な「肩」には微妙な違いがあります。肩の痛みは「肩の関節部分が痛い」場合と「首から肩にかけての範囲が痛い」の2つに分けられることが多いです。痛みの原因を特定し、他の病気が影響している可能性を考慮して正確に診断する必要があります。肩こりの多くは実際には「首」からの影響が大きいことがあります。適切な診断を受け、早期に治療を始めることが重要です。
肩の痛みでお悩みの方は当院にご相談ください
肩の痛みは急性期から積極的な炎症抑制の治療を行うことが効果的です。そのため、肩に違和感を感じたら早めにご相談ください。症状を放置すると関節が固まり、治療が長引く可能性があります。
当院では精密な分析、多様なリハビリテーションを提供しています。理学療法士が丁寧に指導し、患者様一人ひとりに合わせた最適なプログラムを提案します。何かお困りごとがありましたら、お気軽にご連絡ください。